◆2023年の抱負など◆
絶好調の今だからこそ『次を考える』ことが大切なんですね。そう、今年のテーマは『次の~を考える』みんなで次のビジュアルアーツを考えよう!
1月4日の読売新聞にこんな記事が掲載された。
『中国、今度は化粧品標的…繰り返される大国の要求と摩擦』
まあ要するに、中国が今年(2023年)の4月までに化粧品の原料全成分の公開をしなさい、しないとそれ以降は中国国内で化粧品の販売をさせないよーと言う話。
やるな中国……。
日本が先行していた新幹線や太陽光パネルなんかも、これまでそうやってうまく技術移転を求められてきたから、結局、今回もなし崩し的に開示に応じざるを得なくなって、結局は秘伝のタレみたいなモノを失っていくんだろう。
それはともかく……
みなさま、あけましておめでとうございます!
いやー、化粧品よお前もか……。
と、ちょっぴり残念な気持ちにはなるけれど、でも問題はそこじゃあない。
私だって、毎年目先の利益を追及しちゃう私企業のオーナー社長だし、自分たちのゲームやアニメを世界に頒布させたいと願っている立場なんだから、グローバル化とそれにともなう技術の流出を憂う立場になんかない。だってこーんなに流れの早い時代に、秘伝のタレもないでしょ。
そんなことより大切なことは、みんなそうやっていろいろ考えてるってことですよ。
そう、今、まさに、この瞬間にも、中国の人たちも、そして優秀な日本の企業さんたちも、みんなが過去を振り返り、そして必死で次のことを、未来を考えている。それがなによりも大切なことなんだ。
■今年の抱負
そんなこんなを考えつつ、新年を迎えた私。今年も恒例のビジュアルアーツ新年ブログ、『一年の抱負』を発表したいと思います。
というわけで、今年はこれだっ!
どん!
で、これを実現するために、まずは以下のことをやっていこうと思う。
・次の世界を考える
・次の会社を考える
・次の作品を考える
せ、世界っすか!?
と思ったそこのアナタ。
はいはい。そう身構えないで(笑)
コロナが曲がりなりにも収束して、世界が一気に活性化するとともにグローバル化がさらにすすみ、さらにネットワークやAIが想像を超えてコンテンツへの関りを強めて来れば、われわれの活動だって影響を受けずにはいられない。もはや企業の今後は、そういう世界との関りを意識せずにはいられないってわけですよ。
■去年のおさらい
とまあ、それは置いといて(笑)
まずはいつものように、去年をふりかえることから始めてみよう。
去年は『協業を深化させる』を合言葉に、さまざまな取り組みを行った。こんな感じだ。どーん!
いやー、コンテンツはなんといってもヘブバンがエポックだったなー。
それ自体はとっても嬉しいことなんだけど、その分ちょっぴり他のコンテンツ制作のリソースが不足したみたい。
もちろん人員は去年のうちに増員を重ねて、事務所も増設したけど、まだまだ足らないよ。
海外のIT大手みたいに足らなきゃガッツリ採用して、いらなくなったら簡単にレイオフ(首切り)できるような法律のない日本では、採用と首切りをダイナミックにやることなんてできないし、そもそも、わが社のような制作メインのクリエイター系の会社じゃ採用しても育つまでには時間がかかる。
そんなわけで、今も恒常的に人材不足ではあるし、募集も真っ最中なので、われわれと一緒に働いてみたいクリエイターやプログラマーの人たちは、ぜひよろしくご検討ください。
【VISUAL ARTS 人材募集ページ】
■次の世界を考える
さて、去年をざっと振り返ったところで、次はいよいよ今年について考えてみよう。
まずは「次の世界を考える」
そして世界と言えば、これでしょう。
1.グローバル化を再認識してみる
とにかく、デジタルコンテンツの業界じゃ世界がうんと近くなってしまった。今日作ったアニメは同時に全世界に向けて発信され、コミックやゲームもあっというまに翻訳されて世界に行きわたる。
つまり、エンタメ系のコンテンツはもう世界を想定せずにはビジネスを語れないんだな。
がっつり文字の多いビジュアルノベルだって、STEAMやコンシューマ系ダウンロード販売の普及で、翻訳さえすれば世界に頒布することが可能なんだからびっくりだ。ホントに、ほんの20年前には考えられなかったことだよ。
てなわけで、
コンテンツのグローバル化には、今年も当然に取り組んでいきたい。とりわけ、DLサイトであるSTEAMには、積極的にリリースしていくつもりだ。んでもって、その間口も、もっと増やしていこうと思ってるんだよ。
<去年のSteamを中心とした海外展開>
2022年3月14日 『Summer Pockets』 |
簡体中国語追加バージョンアップ 英語・簡体中国語対応 |
2022年6月2日 『LOOPERS』SWITCH版 |
新規リリース 日本語・英語・簡体中国語対応 |
2022年9月20日 『planetarian HD』 |
日本語・英語追加バージョンアップ 日本語・英語・簡体中国語・繁体中国語・フランス語・ドイツ語・スペイン語対応 |
2022年11月22日 『Rewrite+』(Sekai Project) |
支援者名の入ったエンディング追加など大型アップデート 英語対応 |
<2023年海外展開予定>
2023年4月予定 『LOOPERS』 |
新規リリース 日本語・英語・簡体中国語対応 |
2023年未定 『LUNARiA』 |
新規リリース 日本語・英語・簡体中国語対応 |
2023年未定 『終のステラ』 |
新規リリース 日本語・英語・簡体中国語対応 |
<2024年以降>
2024年未定 『Summer Pockets REFLECTION BLUE』 |
新規リリース 日本語・英語・簡体中国語対応 |
もうひとつ。
海外ではいわゆる「謎解き」のようなギミック重視のビジュアルノベルがウケる傾向にある。
Keyを中心とした物語系、世界系のノベルはもちろんのことだけど、これからはそうした海外への展開を踏まえたシリーズも、創設していきたい。
おっと、これをわすれちゃいけない。
『ヘブンバーンズレッド』も、韓国語・繁体中国語を追加して世界にむけてリリースする予定だよ~
『ヘブンバーンズレッド」,韓国語・繁体字のリリースに向けて事前登録受付を開始』
それから、海外へのイベント実働も、今こそ、再スタートを切るべきだと思うんだ。
今のうちに準備を整えなおして、来年には各地のイベントへの参加をやっていきたい。
2.VRやAIを考えてみる
ところで、世界といえば、もはやこの現実世界だけではなくて、VRやAIの世界をも考えなくてはならない時代になってきた。2040年とか言ってたシンギュラリティー(AIが人類の知能を超える技術的特異点)は再来年くらいには来るそうだし、いやはや、まったくとんでもない時代にいあわせたもんだよ。
『【落合陽一のシンギュラリティ論】シンギュラリティは2025年に来る/ディフュージョンモデルの衝撃/知的ホワイトカラーが没落する/最新版デジタルネイチャー/音楽と論文が数秒でできる』
過去たった20年で、世界が様相を変えてしまったことを考えると、この先の数年はきっとおそろしいスピードで進むんだろうね。そんな中で、今年われわれがやるべきことをちょっとばかり考えてみたい。
たとえば、AI利用もそのひとつだ。
Diffusion 2.1 Demo
NOVELAI
nijijorny
もちろんクリエイターたちへの敬意は忘れないし、それはたとえば政治の世界において、いくらEPBMが進んでも、結局は官僚や政治家の決定なしには政策がなしえないことに似ている。
内閣府におけるEBPMへの取組
でも、たとえば、アニメなんかはすぐに中間絵を自動出力できるようになるだろうし、創作では物語の方向性やシチュエーションを入力すれば即座に無数のアイデア出しを行ったり、人間がイマジネーションを得るための世界観ボードを出力するようにはなるだろう。そういうツールとしてなら、AIも積極的に取り入れるべきだと思うんだな。
ただ、いずれも無数の(一説によれば50億枚もの)画像をデータベースとして読み込ませる必要があるので、今のところはクラウドで収集をして、それを組み込んだ学習データを使っているエンジンがほとんどなんだ。もちろん、著作権的にはアメリカはもちろん、日本でも2018年の法改正で(一部を除き)適法となったんだけどね。
著作権法の一部を改正する法律(平成30年法律第30号)について
イラスト自動生成AI「NovelAI」について学習元となったDanbooru公式が声明を発表
各企業ではすでにクリエイションの一助として活用する目的で、スタンドアロンのAIを動かすことを数年前から始めているらしいし、うちもそろそろやらないとね。
もちろん、本質的に新規性を求めるユーザーとの相性や、似通ったコンテンツをチェックする機能は必要になるだろうけど、まあ、社内にも研究チームが立ち上がったと聞くし、とりあえず予算と人員を確保していこうかな?
最終的には、VRの中でキネティックノベルをやったり、GIFみたいな一枚絵の中にクラウドでの変化を内在させて対話できるイラストなんかができたら面白いよね!
■次の会社を考える
で、次は会社についてだ。
組織である会社も、やっぱり変わらずにはいられない。
私もけっこうなトシだし(なんと62歳だ悪いかバカやろー)、いつまでも社長でござい(w)と威張ってはいられない。
ただ、すでに数年前から現場を動かしているのは役員たちで、私は一線からは離れ、たまに会議に出席する程度だったりする。
そりゃこうやって大きな方向性は示してるつもりだけどさ、それもしょせんは二流の知ったかぶりなんだよな。となれば、常に会社は現場が動かすものだし、この絶好調の今だからこそ、次の会社を考えるべきだと思うんだよね。
つまり社長交代(どーん!)
んでもって、その次は会社を永続的に存続せしめるための一手をどうするかも考えないとな。
株式上場して資本を安定させるのか、それとも上場企業の子会社になって安定企業を目指すべきか。
どっちにしてもデカイことなので、そう簡単にはいかないだろうけど、いや、まあ考えるよ。
「悩める社長篇」M&Aキャピタルパートナーズ
■次の作品を考える
とまあ、今年はちょっぴり、コンテンツとはかけ離れた話をやってしまったゴメン。推定3割の人が読むのをやめたかもだけど、まーややこしいことはこれくらいにして、急いで作品について語ってみよう。
1.Keyの次回作とアニメーション
まずはお待ちかね、Keyのフルプライス作品=サマポケに続く次回作と、その『Summer Pockets』のアニメ化についてだ。
これって、もう何年もやってますやってます詐欺みたいになってて、その割にはぜんぜん情報が出せなくて申しわけないんだけど、やってます(爆)
まずKeyのフルプラ次回作だけど、
PCゲームはもちろん、選択肢のないキネティックノベル、アニメーション原作、モバイルゲームなど、さまざまな展開をやってるKeyブランドとしては、でもやっぱり、フルプラ作品をしっかりやらないとアイデンティティーを失いかねない……と、古参な鍵ファンの私としては思うんだよね。
というわけで、めちゃ多忙な中、現場は大変だけど、しっかり準備して春には(本当に)発表したい。
で、サマポケのアニメ化も同じ。
こっちはより情報統制の厳しいアニメ系のプロモーションに属することなので、今までなんにも出せなかったのがもうしわけなかったんだけど、これも今年はやっと正式に告知できるんじゃないかな。
年賀のKeyツイートでも触れた通り、素敵なスタッフさんたちと巡り合えて、順調に制作中だし、脚本会議やキャラデザに関しても、ようやく終盤まで進んでいるところなんだよ。
それともうひとつ。
これももう2年越しになるオリジナルアニメーション企画のプロジェクトReaper(仮)は、本格的にプロダクションさんや監督さんが決まって、いよいよ骨子を固めるフェーズに入ってきたんだ。ここから先は監督さんのご意見をお聞きしつつ、しっかりといいものに仕上げていきたい。
2.ビジュアルノベル&キネティックノベル
Key ×バイブリーアニメーションスタジオによるTVアニメ『プリマドール』の前日譚や後日譚を、全4作品のキネティックノベルとして制作中なのがこの企画なんだよ。
メインシナリオは、アニメ版シリーズ構成の丘野塔也。バイブリーアニメーションスタジオによるイラストで、アニメ本編と変わらぬ可愛さと感動をお届けしますよ~!……っていうけど、お前ら、ホントに時間あるの?
その他、キネティックノベル作品では他にも動いているものが多数あって、Keyの独立系キネノベが1作品と、それからキネティックノベル大賞の受賞作からも、いくつかの作品がキネノベとして制作されているので、今年はこれらを順次発表していけると思うよ。
3.ASMR(音声作品)
もちろん、音声作品も絶賛制作中だよ。
「かじょサポ」が高評価で回を重ねるごとに売り上げを伸ばしている中、せっかく収録スタジオを東京と大阪に4つも持ってるんだから、それなりのスピード感で新シリーズもやって行きたい。聞くところによれば、もちっとVAのスタッフが総力をあげて新シリーズに取り組んでいるらしいから、きっと面白い作品ができあがるだろう。タノシミだね。
4.ライブイベント&モバイルゲーム
いやー申しわけない。
ホントは去年の10月に実施されるはずだったヘブバンライブは、アーティストさんのコロナ罹患で今年の3月19日に延期開催されることになった。
音楽はヘブンバーンズレッドを形成する大きな要素だ。しかもわれらが麻枝 准が渾身を傾ける力作ぞろい。仕切りなおしてでもちゃんとした形でやりたかった。ちなみに、日程を変更したことで発生した若干のキャンセルチケットは、もうすぐ再販いたしますよ。
あと、2月に一周年を迎えるモバイルゲームとしてのヘブバンも、当然ながら今年も頑張ってやっていきます。大きな世界観をもった本作はまだはじまったばかり。今後の展開にご期待ください!
ところでビジュアルアーツがずっとやってる『偽りのアリス』も、まだまだ続きますよ!
それから
5月にはCharacter1も久しぶりに単独で開催されるそうだ。これにも春に発表されるあれやこれやもひっさげて、今年もプロモーションを軸に出展を考えていこうと思う。
今年には今年の作品がある。だけど次の作品はしっかりと考えていかないといけない。PCゲームであれ、モバイルゲームであれ、アニメーションであれ、今のこの時代に適した傾向と、形態の作品があるはずなんだ。
いずれにせよビジュアルアーツの使命は「世界に通じるコンテンツを生み出す」こと。
それを今年もきちんと考えていきたい。
■反省
最後に反省とお詫びを少し。
それにしても、去年はけっこうミスがあったなあ。
ヘブバンの音楽CDじゃアルバムには傷があったし、年末コミケのタペストリーでも、間違った梱包があって、みなさんにご迷惑をおかけしてしまった。
Job for a Rockstar初回生産限定盤 レコードサイズジャケット商品不良の交換対応につきまして
Summer Pockets VFB / RB VFB B2タペストリー 交換対応につきまして
業者さんのミスといえばそうなんだけど、いつもお世話になってる優秀な業者さんだし、ウチにもなんらかの足らない気配りみたいなものがあったかもしれない。なにより、当社の商品なんだから、責任は当社にある。それにそもそもとして、あってはならないことなんだ。本当にもうしわけありませんでした。
魔は天界に棲む ともいう。
絶好調だからって浮かれてはならず、そんな時こそ、気をひきしめないとね。
みなさんへのお詫びと、再発防止をお約束しつつ、今年のブログを締めくくりたい。
てなわけで、今年もビジュアルアーツをよろしくね~
補記1
成人向けコンテンツのイープロダクト株式会社は無事スタートし、ビジュアルアーツは全年齢コンテンツだけの会社としてリスタートした。これにより外部ブランド機能もイープロダクトが継承することになった。
補記2
ならばと、当然ソフ倫さんからは脱退してもいいのだが、そもそも非アダルトだからといってソフ倫から脱退しなければいけないルールはなく、業界にいらぬご心配をおかけするのも心苦しいので、そのまま加盟しつづけることにした。そもそも、32年も会社をやってきて、過去をなかったことにするのはおかしな話だ。
補記3
社長交代や企業の未来をどうするかは、まだまだ考え中である。もちろん世の中の会社によくあるように、家族に継がせることも考えたが、難しいクリエイターたちを大勢抱え、コントロールしていく当社の繊細な企業活動は、根本的にクリエイターへの敬意と、プロデュースの実力がなければ無理な話である。強引な継承は不幸を招く。
補記4
思うに、近ごろはAIもしかり、個人での創作活動が盛んだが、チームワークで創り上げることにはやや尻込みする傾向にあるのではないか。映画であれアニメであれゲームであれ、クリエイティブ系の会社はみんなそのために寄り集まっている。それぞれが自分の才能を生かし、切磋琢磨し、そこで生まれる発想の飛躍を愉しみながらチームで創造する喜びは、きっとAIにも真似できまいと思う。そしてこの喜びこそ、たくさんの人に知ってもらいたいと切に願うのである。――いっそ、なんの職能も求めず、単に「仲間募集」してみるかな。
(文責:VISUAL ARTS/vavaしゃちょー)
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